10月23日から3日間、東京ビッグサイトで開催された国内最大規模の医療・福祉分野の機器・設備専門展示会「HOSPEX Japan2013」。今回は前回を1149人上回る、5万8055人が来場した。会場で開催された各種セミナーの模様をお伝えする。
特別講演会
ロボット手術のメリットと今後の展開を考える
順天堂大学医学部附属順天堂医院 泌尿器科教授 堀江 重郎 氏
順天堂大学医学部附属順天堂医院泌尿器科教授の堀江重郎氏は、「臨床医からみたロボット支援手術」をテーマに、支援ロボットとなるダ・ヴィンチについて語った。
ダ・ヴィンチのメリットについて堀江氏は、外科医が10年かかっていた技術が、慣れさえすればわずか1年で同様のレベルに達することを挙げた。もともとダ・ヴィンチは、アメリカの国防総省が戦場において負傷をした兵士を、外科医が離れた場所で手術をするために開発したロボットだ。機械であるがゆえに、触感の問題があったという。「当初は触感を備えたものがあったが、実際に外科医が使うと0.5秒ぐらい遅れて触感を感じる」。そのタイムラグに慣れないため、むしろ触感を取ってしまうことになった。
最初は前立腺がんに関わる手術から始まった。前立腺は、男性の体の一番底に固定されている。他の臓器に比べて動きがないために、ロボットによる手術がしやすいのだという。特にダ・ヴィンチによる手術が盛んなアメリカでは、3人に1人は前立腺がんを発症し、10人に1人が前立腺がんで亡くなっている。「近年では、日本でも急速に増えてきており、2025年には1995年の6倍の患者数になるだろうと推測されている。今後も先進国では増えている傾向にある疾病だ」
この手術は心臓、肺などに比べて比較的負担が少ない、つまり手術の翌日にはもう自立歩行ができるため、ロボット手術で応用しやすい。一方で前立線は尿を溜める膀胱、尿を出す尿道の中間にあり、周囲には勃起神経もある。そのため前立腺をとることにより、尿が漏れたり、勃起ができなくなることが大きな問題とされてきた。なにしろ「従来の手術を受ける前に尿漏れがなかった患者が手術後、半年経つと5割の患者に尿漏れの症状が見られ、性交が可能だった患者も8%ぐらいしかいなかった」と報告されているぐらいだ。
ところがダ・ヴィンチによる手術では、尿漏れのない患者が5割、性交可能な患者が5割と患者負担が一気に減少することが分かっている。「がんの手術であっても負担が少なく機能も損なわれないというのは、外科医にすれば感動的な話だ」