米国国立衛生研究所(NIH)をモデルに、医療分野における研究開発の指令塔となる日本版NIH構想がいよいよ動き出した。安倍政権は日本版NIHを柱に、優れた医療関連技術の研究を支援し、産業競争力強化につなげたい意向だ。早くからNIHに着目、実現を提言してきた衆議院議員の塩崎恭久氏を支える政策秘書、岡田裕二氏にその背景と展望を聞いた。
研究と臨床がつながらず実用化に遅れ 各省の縦割りを解消、一元化
岡田裕二氏は、日本版NIH構想の原点が、「大学が取り組む基礎研究だけではなく、実際の治療に役立ち、広く国民の手に届く製品化につなげる臨床研究、治験こそを促進すべき」とする問題意識にあったと説明する。今までの日本では、基礎研究の分野で世界をリードしていても、薬や医療機器の安全性や有効性を調べる臨床研究・応用につながっていないことにより、革新的な治療手段の実用化で外国に遅れを取ってきた。こうした背景には、研究開発に関する各省縦割りにも一因がある。実際、基礎研究は文部科学省、臨床研究・応用は厚生労働省、医療機器、産業育成は経済産業省の管轄になっており、省庁間の連携不足は常々指摘されてきた。また各省庁の予算が重複する例もあり、一体的な戦略が描けず、基礎研究が応用に結びつきにくい現状が続いてきた。日本版NIHでは、各省庁に分かれた基礎研究から実用化までを、さらには医療政策や予算を、一元化することが大きな狙いでもある。