ステント様の管腔機器挿入により脳動脈瘤内に流入する血流を制限し、血栓化を促す新しい治療法「フローダイバーター」が注目されている。高度な技術を要するため、国内では実施できる施設が限定される中、信大病院でもこのほど第1例を実施。小山淳一脳血管内治療センター長は「外科的治療に踏み切れず経過観察していた人にも適用できる可能性がある」とし、これまで開頭術が困難だった大型内頚動脈瘤治療で、選択肢の一つにしたいとしている。
■血流そらし瘤内血栓化
脳動脈瘤に対する治療は、開頭クリッピング術のほかカテーテルを用いたコイル塞栓術が広く行われている。脳動脈瘤内をコイルで充填し瘤内の血栓化を促すコイル塞栓術は、体への負担が少ないことなどから国内では約4割の症例で実施されるが、圧迫症状を生じているような大型の脳動脈瘤の場合は、瘤内にコイル充填しても症状改善が期待できず、治療法として選択しにくかった。
こうした症例に対し、2013年頃から海外では「フローダイバーター留置術」が行われ始めた。多数のワイヤーを用いたメッシュ状のステント様機器「フローダイバーター」を親動脈内に挿入し、脳動脈瘤のネック部分を覆うように展開することで瘤への血流を遮断する方法だ。これにより瘤内に停滞した血液が血栓化し、1年から3年程度で動脈瘤が消失するという。
国内では15年10月に保険適用となり、これまで外科的治療の選択が難しかった大型動脈瘤の新しい治療法として期待が集まった。
ただ、従来のステント留置に比べて高度な技術が必要なため、国内では日本脳神経外科学会など関係学会や販売者の日本メドトロニック社が、厚生労働省の指導下で実施施設を限定。17年11月現在、トレーニング中の施設を含めて26都道府県43施設で実施可能で、県内では信大のみ。治療対象となる動脈瘤も、「10ミリ以上かつ後交通動脈よりも近位の頭蓋内内頚動脈に生じた脳動脈瘤」と規定されている。
信大病院では今月7日、70代女性患者に第1例となる治療を実施し、経過は良好という。小山氏は「適用となる患者には治療の選択肢の一つとして取り組んでいきたい」とし、これまで外科的治療に踏み切れずにいた患者に適用できる可能性を示唆。新たな治療法に期待を寄せている。【11月24日号タイムスFaxに掲載】