長野市医師会(宮澤政彦会長)は15日、長野市内のホテルで今年度の医療事故対策関連講演会を開いた。近畿大学医学部附属病院安全管理部血液・膠原病内科の辰巳陽一教授が「患者中心のフィルター越しに見た~前向き医療安全のすすめ」と題して講演。医療事故を減らすためには、本来のチーム医療を理解するべきだとして、「多職種チームとは医師や看護師らの中に、患者とその家族をメンバーに入れて、医療者と患者の関係を強化することが重要」と呼び掛けた。
辰巳氏は、米国医療界で推進されている組織の安全文化構築のための総合的トレーニングプログラム「TeamSTEPPS」を紹介。同プログラムは、▽多職種チームの構造を理解・共有する▽リーダーシップ・フォロワーシップ意識を持ち行動する▽コミュニケーションの意味を理解し行動する-などを活動目標に置き、医療チームのパフォーマンスと患者安全の向上を目指している。
また、辰巳氏によると同プログラムは、米国軍や航空業界の協力により2005年に開発されて以来、世界中の病院に導入されている。導入後の医療機関では、チームワークの向上に合わせて、エラーの発生率が30.9%から4.4%に減少したことや、看護師の離職率が27%減少したなどの成果が出たという。
これらの成果は、チームにリーダーシップの必要性や、医師と患者の会話の量ではなく質が満足度に関係するとした。さらに辰巳氏は、「患者をチームに入れることによって、リスクが低減し、患者の満足度向上につながり、確認業務の縮小に役立つ」と解説した。
講演会は地元医師や看護師らがトラブルに巻き込まれないように2011年度から「長野市医師会医療事故対策検討員会」を設置して取り組み、今回で6回目。医師や看護師ら約140人が傾聴した。【11月22日号タイムスFaxに掲載】