大規模災害の被災地における精神保健医療需要拡大に対応し、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動支援を行う「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」。東日本大震災を契機に厚生労働省が組織化を図り、各地で具体的な体制作りが進む。16年度末までに、約30の都道府県が活動マニュアルを作成するなど一定の体制整備を完了。県内でも今年、発災から48時間以内に被災地で活動を始める「先遣隊」を組織できる医療機関が登録された。県内発災時に活動拠点本部をどこに設置するかなどさまざまな課題が残る中、早期の体制作りを急ぐ。
DPATは、精神科医師と看護師、事務調整員を含めた数名で構成。必要に応じて薬剤師や保健師、精神保健福祉士などを加え、移動日を含めた1週間を標準活動期間とする。
厚労省が2015年に委託設置したDPAT事務局では17年9月現在、発災から48時間以内に被災地で活動を始める「先遣隊」として39自治体53機関を登録する。登録機関の多くは精神科を持つ総合病院や単科病院で、精神保健福祉センターもある。県内では今年、こころの医療センター駒ケ根の医師ら3人が所定の研修を受け、先遣隊として登録された。
DPATは、DMATに比べて中長期にわたり活動するため、各都道府県は複数の班を構成し、引き継ぎながら活動できるよう整備する必要がある。先遣隊の活動後に継続的な支援を行う後続DPATについては、事務局の指針に沿って都道府県が養成、登録を行うことになる。
19日に県庁で開いた災害時の精神医療体制整備検討委員会(樋掛忠彦委員長)の初会合では、事務局でアドバイザーを務める平澤克己医師がDPATの概要を説明したほか、統括体制や派遣の流れ、活動内容を定めた県の活動マニュアル案などを確認した。委員からは県内で発災した場合に活動拠点本部をどこに設置するかや、DPATだけで全避難所のケアができるのか、などの意見があり、体制整備に向けては多くの課題が浮き彫りになった。
委員会は年度内に2回目の会合を持ち、活動マニュアルや派遣に関する協定など諸規定を整備。「ローカルDPAT」の登録までを行いたいと示している。【10月23日号タイムスFaxに掲載】