県と県立病院機構は15日、県内病院の医療安全管理担当職員らを対象に松本市内で研修会を開いた。富山大学付属病院医療安全管理室副室長で特命教授の長島久氏が「セルフメディエーション~医療メディエーション技法を応用した日常対話と苦情対応スキル」をテーマに講演した。医師と看護師ら合わせ県内全域から120人が参加し、医療現場の紛争を解決する手段「医療メディエーション」と、「院内医療メディエーター」について理解を深めた。
メディエーターは「仲介者」。さまざまな紛争を裁判以外で解決するため専門家が第三者となり、双方の対話を促し、共通意見を見い出しながら解決法を探るのが役割で、長島氏は「医療メディエーションは診療の一環」と説明。
「裁判は患者側にお金と時間の負担を強い、医療側にも傷が残り、双方にとってプラスではない」とし、「院内の医療メディエーターであれば、患者は医療者に対して言いにくいことを言うことができ、医療者が真実を隠しているかどうかも分かり、双方の関係構築の一助になる」と話した。
医療の現場で起きる紛争については、患者と医療者の間にある認識の違いが要因だと指摘。患者には「病院にかかれば病気は治る」「病院は都合が悪いことは隠す」、医療者には「治らない病気もある」「正直に話しているのに信じてもらえない」といった思いがあることを示した。
その上で、「紛争の場では論点が混沌とし、会話が入り乱れる。医療メディエーターには、相手の言葉をしっかり受け止める傾聴と共感が求められる」とし、「医療メディエーションを日常的に取り入れると、質の高い診療につながる。医療者への信頼も強化でき、院内でのクレームや事故への初期対応にも役立つ」と利点を述べた。【10月18日号タイムスFaxに掲載】