松本歯科大学(川原一祐学長)総合歯科医学研究所の小林泰浩教授らの研究グループは神戸大学との共同研究により、破骨細胞が骨を溶かす新たなメカニズムを解明した。同研究は8月30日、米科学雑誌「サイエンス・シグナリング」に掲載された。
骨を壊す「破骨細胞」は、細胞内の骨組みを再構築し、骨と接する部分でアクチンリングと呼ばれる構造を作る。アクチンリングによって囲まれた部位では、細胞の外に向かって酸とタンパク質分解酵素が分泌され、骨を溶かすことが分かっていたが、今回の研究では、破骨細胞内のタンパク質「プロテインキナーゼN3(PKN3)」に注目。PKN3が環状構造形成に必要な分子と結合すると、破骨細胞のアクチンリングの形成を促進し、骨吸収機能を促進することを突き止めた。骨吸収を阻害する新たな低分子骨吸収阻害薬の開発につながるものと期待されている。
高齢者人口の増加に伴い、骨粗鬆症の患者が増えていることを受け、8月30日に松歯大で記者会見した小林教授は「今回の研究が新薬の開発につながればうれしい」と話した。【9月1日号タイムスFaxに掲載】