長野圏域にある県長野保健所と長野市保健所の共同設置に向けて検討してきた検討会議は25日、統合による業務効率化が見込めないことや、庁舎スペース確保の難しさなど多くの課題を除去できないとして、両保健所の共同設置を実施しない方針を固めた。今後は研修の合同実施やレセプトデータの共有化など相互に協力できる分野を探し、連携強化に努めていく。
保健所の共同設置については、2011年度に地方自治法の一部改正により共同設置できる機関として保健所などの行政機関が新たに追加された。長野圏域では、14年から県と長野市職員による検討会議で両保健所の共同設置に向けて研究。人材や施設を集約することでサービス向上や効率化、専門職の確保、職員の負担軽減などにつながる可能性があるとして検討を重ねたが、市の保健センター業務を始めとするそれぞれの独自業務をどう運営するかや増改築コストの面で課題を取り除くことができず、期待した効果が見込めないと判断した。
県健康福祉政策課によると、庁舎の増改築等に要するコストは5~10億円程度。検査室などを共用して一定程度のスペースを削減できたとしても、検査機器を単純に削減することは難しいといい、スペース確保の問題も残った。
両保健所が行う384事業のうち共通業務を除く独自業務は、管内市町村への技術支援など県の業務が75、保健センター運営など市の業務が126。市保健所では従来通り市町村業務と保健所業務を一元化して企画立案からサービス提供まで一体的に運営できるかが課題だったが、指揮命令の明確化や業務量の多さに課題が残った。
清水剛一同課長は「共同設置をしても各保健所の仕事量はそれほど減らず、当初期待したような業務のスリム化は期待できない。職員も増員となる可能性がある」と指摘。将来の人口減少に向けて長期的な視点では、再び合同設置を検討する可能性も示唆したが、現在では「時期尚早」とした。
検討会は、両保健所の業務については従来の役割を維持し、相互人事交流や養成研修の合同実施、レセプトデータの活用などで連携を強化していくことを確認。今後は必要に応じて連携会議などを開催していくとした。【8月28日号タイムスFaxに掲載】