伊那中央病院(川合博院長)は、肺がん分子標的薬導入クリニカルパス導入から半年経過したことを期に効果について検証を行った。パス適用全8件のうちジオトリフを導入した4件を抽出したところ、パス導入前平均25.3日だった在院日数が導入後には平均18日に短縮したほか経営効率への寄与もあり、その有用性が確認できた。
近年肺がん治療に推奨されている肺がん分子標的薬(EGFR―TKI、ALK―TKI)は、下痢や肝機能障害など従来の抗がん剤とは異なる副作用が頻発し、間質性肺炎も散見されている。こうした副作用のマネジメントと、スタッフごとの理解の個人差を無くして標準化・効率化することなどを目的に、同院では2016年9月にクリニカルパスを肺がん分子標的薬7剤について作成し、使用している。
今回の検証でパス導入によりDPC分類の入院期間が従来のⅢからⅡでの退院となり平均在院日数の短縮、DPC-出来高/入院日数の値が40ポイント上昇したことが確認できた。また、現在までに大きな副作用や逸脱はなく、安全で有効な治療が行えているという。
パスの分析を行った同院薬剤科の北澤利浩氏は、「がん薬物療法では免疫チェックポイント阻害剤など新薬がどんどん出てきている。今回のパスを参考にして、そのような新薬の導入時にも標準化できれば良いと思う」と話している。
今回のパスは入院時のものなので、下痢や皮疹、肝機能障害など2週間ほどで現れる副作用には対応が可能。しかし、爪囲炎や間質性肺炎などそれ以上先に出る可能性があるものについては退院後の外来指導となるため病院だけではフォローしきれない部分があるという。そのため保険薬局との綿密な薬薬連携が課題であり、今後検討していく予定だ。【7月10日号タイムスFaxに掲載】