1927年の開院から今年で90周年となる市立大町総合病院。21年前の1996年、同院に着任した井上善博院長に印象深かったできごとや今後の抱負について話を聞いた。
医師不足はどの時代も課題で、2015年には産科体制が整わず分娩休止に追い込まれた。しかし地域有志「大町病院を守る会」の5万名署名により、同年秋には再開できた。「同会の尽力を得た。我々以上に大変だったと思う」と当時を振り返った。
3年前には信大病院総合診療科の研修病院指定を受けた。医師不足は運営にも支障をきたしていたが、「この頃から院内の雰囲気が変わってきた」。同地の高齢化率は35%。高齢者に多い複数疾患に対応する総合診療は、最も実情に合ったスタイルだ。医師不足状況を補うことともなり、今年度も初期研修医5人、専攻医3人を迎え、院内は活気づいている。
井上氏が院長に就任してから特に印象深かったことの一つが神城断層地震だという。発災から30分後には災害対策本部を設置。2カ月前に防災訓練を行っていたことから、職員らが高い意識を持ち、てきぱきと対応した。
■近隣病院と役割分担し、専門医体制を充実
以前は急性期だったが、時代とともに回復期、慢性期、在宅医療を担い、地域との関わりが強まった。今後は北アルプス医療センターあづみ病院など近隣病院と役割分担しながら、この流れを強化させ、専門医体制の充実も図りたいと力を込める。
「自然に恵まれたこの地を選んで来てくれるドクターも確実にいる。そういうドクターが増えてくれればありがたい」と笑顔で語った。井上院長はポタリングクラブ(自転車散歩)の会長で、余暇には仁科三湖に映る北アルプスの水鏡を楽しむため、ロードレースを走らせている。
兵庫県姫路市出身。【6月30日号タイムスFaxに掲載】