国立病院機構まつもと医療センター中信松本病院(大原愼司副院長)は12日、機能改善治療用ロボットスーツHAL(医療用下肢タイプ)の治療経過について会見を開いた。医療用では1月に県内初の導入で、これまで5人の患者に適用した。下肢の障害や脚力が弱まった患者のリハビリ用の治療機器で、現在8つの神経難病が適用対象となっている。大原副院長は会見で「適用疾患は今後さらに増えるはず。画期的な方法を広く知ってもらい、多くの患者に利用してもらいたい」と話した。
体を動かすには脳から神経、神経から筋肉へと信号を送る経路の働きがあり、その信号は筋電位として皮膚表面に漏れ出る。ところが脳や神経に疾患があると経路が上手く働かず、脚の動かし方がわからなくなるなど身体機能の低下を生じる。これに対しHALは、脚などに貼ったセンサーが皮膚上に検出した電位を読み取り、装着者の「歩きたい」などの意思に従い関節部のモーターが作動。下肢の動きを補助する。
同院では導入時の1月から5人の外来・入院患者に適用し、現在は3人の治療を続けている。脊髄性疾患、筋疾患、末梢神経性疾患など保険適用の8疾患が対象。海外では脳卒中や脊損、痙性対麻痺などにも使用され、日本でも治験が進んでいることから、今後適応疾患は増える見込みだという。理学療法士の指導のもと、9回を1クールとして行っている。歩行前後で評価を行い、運動機能向上が見られれば、さらに継続していく。ぐらつきが安定し脚力がついたなどのほか、歩行速度にも効果が出ているという。
同院神経内科部長の中村昭則氏は、介護用のHALは動けない人の補助を行うのに対し、「医療用のHALは“歩く”という動作の感覚や安定した歩行の感覚を脳に再教育し、装着者の身体機能を維持する効果がある」と、両者の違いについて説明した。
1カ月前からHALを使用しリハビリ治療を行っている同院患者の50代男性は、20kgのHALの重さは全く感じないと話し、「意思どおりに作動し、歩行練習への意欲がわく」と感想を述べた。【6月15日号タイムスFaxに掲載】