信州大学とカシオ計算機が共同開発を進める皮膚疾患の診断サポートシステムが、このほど行われた医用画像認識技術の国際コンテスト「ISBIチャレンジ2017」皮膚部門で総合1位となった。人工知能(AI)を活用した画像解析技術により皮膚疾患の鑑別を高精度で行えることを示し、実用化に弾みをつけた。今後は分類できる病変を増やすなどして改良を進め、早期の実用化を目指す。
画像変換技術に強みを持つカシオと信大は、2016年4月に皮膚疾患のコンピューター診断支援システムの共同技術開発をスタート。特殊な拡大鏡を用いて皮膚色素病変の良悪性を診断する「ダーモスコピー」検査に際し、機械学習を用いた画像解析技術で病名の可能性を提示させる狙い。同社が15年から提供するダーモスコピー学習用クラウドサービスの将来的な拡充も視野に入れた取り組みだ。
コンテストは、ダーモスコピー検査の標準化などを進めるプロジェクト「ISIC」が主催し、皮膚部門の開催は2回目。参加者は事前に提供された白人のダーモスコピー検査の画像2000データをもとに計算モデルを作成。メラノーマ、良性ホクロ、脂漏性角化症が混在する未知の600データを鑑別して精度を競った。予備戦を経て、本戦には各国から22チームが参加した。
共同開発チームは、症例画像の色や明るさを調整するなどの画像処理や、識別対象の異なる識別器を組み合わせるアンサンブル学習といった「効果的な学習のための工夫」を重ね、最終的に高いスコアを獲得。共同研究開始から約1年での快挙となった。今回、判断の難しい白人種の色素病変鑑別を高い精度で行える実力を示したことで、国内での実用化にも弾みがついた。
信大皮膚科学教室の古賀弘志講師は「国内でもこれだけ(高い精度で)鑑別できる皮膚科医はいないのではないか」と評価。一般のクリニックなどでは1人の医師が経験できる症例が限られる一方、AIは人間の経験を超えるハイスピードで学習でき安定的な結果を得られるという。
同社DC企画推進部の北條芳治部長は「どこの地域でも一定の高度な医療を受けられることが目標。今後は分類できる疾患を5種類程度にまで増やし、臨床試験を開始する準備段階まで共同研究を進める。医師の診断を補助するサービスとして実用化を目指したい」としている。【5月1日号タイムスFaxに掲載】