松本薬剤師会(加賀美秀樹会長)は11日、県薬剤師会医薬品総合研究センター(松本市)で保険調剤セミナーを開き、会員ら44人が参加した。松本薬剤師会専務理事・学校薬剤師部会長の田多井健介氏が昨年8月に受けた厚生労働省主催研修会の伝達講習として小・中学生などに対する薬物乱用防止指導について講演し、「薬物依存は回復するが完治はしない。1回の使用でも脳や体に影響が出て、断薬しても記憶のフラッシュバックがあり、いつでも止められると思い込ませない指導が必要」と強調した。
田多井氏は、薬の目的は治療、予防、検査の3種だけで、気持ち良くなるや楽に痩せるなどは本来の使用目的ではないとしっかり伝えるべきだと説いた。
学校で教える場合には、薬学など知識の伝達よりも自己肯定感やライフスキルを持ってもらうために、どういう状況でどう判断するかの能力をつける教育が求められていると前置きし、「1回だけなら大丈夫」や「これを使えば気持ち良くなる」などと誘われても自分で判断し、その場から立ち去るよう啓発することが必要と話した。
また、法務省が集計した世代別薬物乱用者数グラフを示し若年層の減少について触れ、近年の薬物乱用防止啓発教育などの効果が出てきていると説明した。
実際に学校向けの模擬授業を行い、覚せい剤やコカイン、大麻など代表的な違法薬物を挙げながら、薬物乱用が脳や神経に与える悪影響を図などを用いて解説。また、一人で悩まずに身近な家族や先生、専門家などへの相談が重要と話した。
啓発教育について「小学校、中学校、高校で継続的に行い、忘れかけた頃にもう一度復習させることが重要」と締めくくった。
加賀美会長は「最近学校側から薬剤師に対して薬物乱用防止の講演依頼が多いことから今回のセミナーを企画した。こうしたセミナーを機に薬剤師も子ども達への教育に積極的に取り組んでほしい」と話している。【4月14日号タイムスFaxに掲載】