第8回日本小児心身医学会関東甲信越地方会が5日、県内で初めて松本市中央公民館(Mウイング)で開かれた。県立こころの医療センター駒ケ根副院長の原田謙氏が「家族と暴力-小児科医に求められること」と題して講演。将来、子どもが暴力を振るわないないようにするためのポイントは、「小児科医を中心に医療と地域が連携し、出生から就学まで家族をサポートすることだ」と解説した。
原田氏は児童自立支援施設の嘱託医を務めており、同施設でルールを守らず反抗的な行動を起こす素行症に関しての調査を2012年4月~16年3月まで実施。小学5年生~高校2年生までの児童47人を対象に行い、18人が暴力的な子どもだったという。このうち、8割以上に当たる15人が男子で、14人の親が離婚しており、8人に神経発達症が見られた。暴力はADHD(注意欠如多動性障害)をはじめとする生まれつきの特性と環境との相互作用によって生じるリスクが高まると考えられ、これらのデータは「キレる子ども」を考える参考になると話した。
また、子どもの発達特性、親の特性、虐待のリスクを感じ取ったら、その親子を周産期から小学校入学まで、継続的にサポートすることが重要とし、医療と地域の連携が必須だと説明。暴力に至らないために考えられる介入の項目として、▽3歳児健診までにADHDなどの発達症特性をもつ子どもを選び出す▽虐待のリスクや支援が必要な親の特性を評価する▽専門家として何ができるのかを把握しておく-などを挙げ、自分の立場を考えて児童精神科などと連携していくことが必要だと強調した。
今回の医学会は、医療従事者や行政関係者、学校教員らさまざまな職種が参加し、約140人が傾聴した。6の一般演題のほか、中村心理療法研究室の中村真一氏の講演があった。【3月8日号タイムスFax】